同じ商品でもネーミングの良し悪しで売り上げが大きく変わる
「ゴリラの鼻くそ」という甘納豆をご存じでしょうか?
今や全国各地の動物園の定番土産として欠かせないヒット商品となっていますが、元々は島根県の酒屋が酒類の売上が落ちたことから実家で作っている黒豆の甘納豆を売ることからスタートしたものでした。
しかし、ただの甘納豆では他の商品と差別化ができないとして面白い名前はないかと落語同好会の仲間と雑談していたとき、見た目が「ゴリラの鼻くそみたい」と盛り上がり、商品名にしたとのことです。
甘納豆らしからぬユニークな名前が世間で広く支持され、大ヒット商品につながりました。また、この斬新なネーミングをもとに、動物園の売店という販売チャンネルを切り開いていきました。
なお、「ゴリラの鼻くそ」という名称は2000年に商標出願され、第4521877号として商標登録されています。
ゴリラの鼻くそ(販売元の(有)岡伊三郎商店のホームページより)
また、商品の名前を変えることにより中身が同じでも売り上げが大きく伸びた例も枚挙にいとまがありません。
例えば、お茶で有名な伊藤園は、1984年に世界で初めて緑茶の缶飲料を発売しました。それまではお茶は家で飲むものでしたが、缶製品として自動販売機等で販売を開始したのです。
当初の名前は「缶入り煎茶」でしたが、最初はあまりヒットしませんでした。
そこで1989年に「お~いお茶」に名前を変えたところ、親しみやすいネーミングから売上は6倍近くに伸びたとのことです。
お~いお茶(販売元の伊藤園のホームページより)
このように、今日ではネーミングの良し悪しで商品の販売量が大きく変わり、ヒット商品を生み出すネーミングはブランド力をも生み出します。
ネーミングはいつ考えるのが良いか
それでは新規事業を行うにあたり、商品やサービスのネーミングをいつ考えればよいでしょうか。
もちろん商品の販売時やサービスの提供時に内容にあったネーミングを考えるという方法もありますが、お勧めなのは開発当初から最終製品の名前を決めることです。
最初にネーミングを決めることで「錦の神輿」となり、開発陣に愛着がわくことによってチームワークが良くなります。
例えば、楕円形の木製のぐい呑み(おちょこ)について、その形状からケプラーの法則を参考にして「けぷらーかっぷ」という名前を最初に決めたところ、小さな杯の中に楕円の模様をいくつか描いて盃の中に宇宙を表現するといった様々なアイデアが開発段階で次々に生まれてきました。
このように、ネーミングを最初に決めることで開発期間を短くすることができ、製品化の成功率を高めることができるというメリットがあります。
けぷらーかっぷ(販売元のA-DAEN社のホームページより)
新商品のネーミングを決める際には商標検索およびドメイン検索を
新しい商品やサービスのネーミングを決める際に気を付けなければならないのは、既に世の中にある商標登録された名称と同じまたは似たような名前にならないことです。
このためにも、ネーミング会議では、商標検索およびドメイン検索を並行して行うことが好ましいといえます。
特に、商標の場合は既に登録されている商標と同じ名前ではなく類似の名前を使用した場合でも他社の権利侵害となるので注意が必要です。
登録商標と同一または類似であるか否かを調べるオンラインツールとして様々なものが提供されています。一例としてToreru社の商標サイトが挙げられます(https://search.toreru.jp/)。
このサイトで気になる商品名やサービス名を入力して検索ボタンを押すと、既に登録されている商標と一致または類似するか否かの結果が瞬間的に出されます。
このようなオンラインのサイトを活用することにより、新しく思いついたネーミングが既に他社に商標登録されているか否か、また自社が商標登録出願した際に特許庁により登録査定となるか否かの参考にすることができます。
ただし、このようなオンラインのサイトでは商標検索に限界があるため、できれば弁理士等の知財専門家がネーミング会議の場に同席した方がより良いでしょう。
また、商標だけではなくドメインにも気をつける必要がある場合があります。
新しい商品やサービスの特設サイトをウエブ上で構築する際に、その商品やサービスの名称をそのままドメイン名とする場合があります。
JPRS Whois(https://whois.jprs.jp/)では、ドメイン名の登録情報を簡単に検索することができます。
また、有名なものであれば商品名やサービス名に関するドメインも取得しておかないと悪意ある第三者に取得されたときに厄介なトラブルとなりかねません。
このように、新しいネーミングを思いついたときには、商標だけではなくドメインについても調べておくことにより将来のトラブルを未然に防止することができるようになるでしょう。