元社員による営業秘密の持ち出しが大きなトラブルに
携帯電話大手ソフトバンクの元社員が同業他社に転職する際に高速・大容量通信規格「5G」に関する営業秘密を不正に持ち出して逮捕されたことが話題になっています。
警視庁の発表などによりますと、元社員はソフトバンクに勤務していたときに社外の私有パソコンから同社が管理するサーバーに接続し、営業秘密に当たる5Gの技術情報ファイルをメールに添付して自分宛てに送信することにより不正に持ち出した疑いがあるようです。
また、ソフトバンクは元社員の転職先の会社を相手取り、営業秘密の利用停止と廃棄などを求める民事訴訟を起こす方針を明らかにしております。
近年では転職や副業が盛んに行われるようになり、このような営業秘密の持ち出しによるトラブルが増えております。
営業秘密とは、会社が持つ技術データや顧客データのことをいい、企業が持つ秘密情報が不正に持ち出されるなどの被害にあった場合に、不正競争防止法に基づいて民事上・刑事上の措置をとることができます。
過去の大きな事件としては、新日鉄住金の営業秘密を元社員が持ち出し、韓国のPOSCO社に売り渡したとして新日鉄住金がPOSCO社に対して営業秘密の使用差止や損害賠償を求めて提訴したことがあります(その後、両社は和解)。
経営戦略の一環として秘密情報をしっかりと管理しましょう
営業秘密が外部に漏れたりライバル会社に持ち出されてしまったりしたら会社の存亡の危機に陥ることもあります。
このため、秘密情報をしっかり管理することが求められます。
不正競争防止法における営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性の要件を満たしていなければなりません。
これらの要件を満たしていない場合は会社から持ち出された情報が秘密情報として認められず、民事上・刑事上の措置をとることができません。
ここで大切なのは、秘密情報は社内で適切に管理しなければ法律による保護を受けることができないことです。
このような秘密情報の管理方法について経済産業省が発行するパンフレットに詳細が記載されていますので紹介します。
まずは営業秘密として管理すべき情報を把握する必要があります。
具体的には、技術やノウハウ、ブランド等の自社の強みとなる知的資産を把握します。
また、製造プロセス、販売マニュアル、仕入先等、知的資産を構成する具体的な情報を把握することも大切です。
そして、把握した具体的な情報の中から、営業秘密として管理したいと考える情報を選択します。
また、営業秘密として管理する情報については、それが秘密であることを就業規則、秘密保持契約等により指定し、従業員や取引先に対して周知することも重要です。
このように、秘密情報についてしっかり管理を行うことにより外部に漏れることを防ぐとともに、万が一外部に持ち出されてしまっても法律による保護を受けるようにしておくことが大事になってきます。